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【#02】組織の現場:下士官のリアリズム

命令と実態の乖離

山本七平は、フィリピン戦線での自らの体験(砲兵少尉としての経験)を基に、組織の末端で何が起きていたかを赤裸々に語る。

大本営から降りてくる「作戦」は、現地の地理も補給も完全に無視した机上の空論だった。しかし、それを「不可能」と言うことは許されない。結果、現場では「やったふり」をして報告を誤魔化す辻褄合わせが横行する。

これこそ、現代の企業でもよくある「本社と現場の乖離」だ。「必達目標」という名の無理難題が降りてきた時、現場は数字を「作る」ことにエネルギーを費やす。70年前から変わらないこの構図に、戦慄すら覚える。

言葉が現実を遊離する

組織内で「勇ましい言葉」や「精神論」が幅を利かせると、具体的なデータやロジックは軽視される。「言霊(ことだま)」の支配だ。山本は、日本人が陥りやすい罠をこう指摘する。

「日本人は、現実そのものよりも、言葉によって解釈された現実を優先してしまう癖がある。」
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