古典物理学では説明できない
遺伝情報は非常に小さな領域(染色体)に格納されている。しかし、これほど小さな物質が、何世代にもわたって安定して情報を保持し続けることは、当時の古典物理学的には奇跡に近い。
なぜなら、微細な世界は熱運動によって常に攪乱されているからだ。シュレーディンガーはここで量子力学的な「飛びとびの状態(量子飛躍)」を導入し、遺伝子が極めて安定な分子構造(非周期性結晶)であると推測する。
彼がこの推測をした時、まだDNAの二重らせん構造は発見されていない。純粋な理論的思考だけで「生命の設計図」の正体に迫ろうとする姿勢に圧倒される。
コードスクリプトという予言
さらに彼は、染色体が単なる物理的な結晶ではなく、個体の発生と機能を決定する重要な要素を含んでいると予言した。
「それは、個体の未来の発生と、その成熟した状態での機能のすべてを決定する『暗号(コードスクリプト)』である。」
これは現代のプログラミングにおける「ソースコード」そのものだ。50代現在、私たちが当たり前のように使っているデジタルな概念が、生命の本質として80年前に予言されていたことに驚きを隠せない。
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