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掌編小説:真夜中のコインランドリー

回転する洗濯機を見つめながら、男は過去を洗い流そうとしていた……。800文字で描く静寂の物語。

(本文)

午前2時。コインランドリーの乾燥機が唸りを上げている。男はベンチに座り、ただその回転を眺めていた。

「回る、回る」と彼は呟いた。

昨日の失敗も、明日の不安も、すべてこの温かな風の中で撹拌され、やがてふわりと乾いて消えてくれればいいのに。

自動販売機の珈琲はぬるかった。けれど、その不完全さが今の彼には心地よかった。

(了)